一、神社について
1.狛犬が参道を向いているのはなぜ?
狛犬は大陸から渡来した架空の霊獣である獅子や霊力のある犬と考えられていました。もとは宮中で魔を祓うための置物や几帳(きちょう)と呼ばれる移動式カーテンの重石として用いられたものです。木製で殿内に置かれていたのですが、次第に外へ向かって睨みをきかすようになり参拝者の心を引き締めているのです。
今でも神社の拝殿などにある獅子・狛犬の多くは入り口を向いています。それが次第に陶器や石造製のものが現れ、屋外に置かれました。特に参道に出た狛犬は向き合う形を取るようにもなり、それが今日にも伝わっているためです。
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2.狛犬が阿吽になっているのはなぜ?
本家本元ともいうべき中国の紫禁城にある黄金の獅子や沖縄のシーサーなどを参照すると、狛犬が最初から阿吽の一対ではなかったことが解ります。チベット仏教で出している暦があります。
これには仏を取り囲む像や獅子を描いていますが、特に阿吽にはなっていません。獅子・狛犬として伝来したのち、仏教者たちの「あ」は始まり「ん」は終わり、「あ」「ん」で一切合財を表すとする解釈が加わり、説明的に阿吽像として作られるようになったものと思われます。
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3.鳥居にはどんな種類があるの?
大きく分けると2種類あります。
神明系の鳥居として、黒木鳥居(京都野宮神社ほか)、靖國神社(東京靖国神社)、伊勢神宮(三重伊勢神宮)、白丸太鳥居(東京武蔵野陵)、内宮源鳥居(京都吉田神社)、鹿島鳥居(茨城鹿島神宮)、宗忠鳥居(京都宗忠神社)があります。
明神系として、春日鳥居(奈良春日大社)、八幡鳥居(長野御射山神社ほか)、住吉鳥居(大阪住吉大社)、中山鳥居(岡山中山神社)、山王鳥居(滋賀日吉大社)、奴禰鳥居(京都錦天満宮)、宇佐鳥居(大分宇佐神宮)、筥崎鳥居(福岡筥崎宮)、両部鳥居(広島厳島神社ほか)、唐破風鳥居(京都御苑内の厳島神社)、三輪鳥居(奈良大神神社)、三柱鳥居(京都木嶋坐天照御霊神社、東京三囲神社、長崎和多都美神社)などがあります。
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4.千木・堅魚木って何?
古来、木材を左右から交差させて結び、その先を切り捨てずに天空に高く突き出したものを千木(または比木)と言います。上代の家屋の作り方によるもので、神社建築に受け継がれています。
祝詞の慣用句に「高天原に千木高知りて」とあります。「高天原」とは天照大御神以下の神々がいらっしゃる世界を言い、更に「天空」をも指します。なおチ・ヒは神霊を意味する語ではないかと思われます。
千木は「高天原に向けた神霊が憑り来る木」の意に由来する命名でしょう。伊勢の内宮では内削ぎ、外宮では外削ぎになっています。
堅魚木のカツオとは「堅い魚」の意味です。地方の民家で茅葺の茅を抑えてあるものがこれに相当します。本来は、棟木の補強に用いたものが現在では装飾を兼ねています。堅魚木の数は最小2本から最大10本まで、と神社によってかなり違いがあります。
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5.神主さんの袴の色が違うのはなぜ?
有職故実によっています。今日では等級(神職の位階)によって区別しています。伊勢神宮を除き、一般に白は出仕(試用期間の人)が着用します。任用後は浅黄色を着けます。これは三級神職用です。
次いで紫。これは二級神職用となります。次いで紫の地に紫の紋。これは二級の上。次に紫の地に白の紋が一級浄階。そして白地に白の紋は特級浄階で最高位を表します。
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6.巫女さんになるには?
巫女さんになるための資格はありません。出なければいけない学校もありません。年齢・資質など二、三の条件によって選ばれますが、それぞれの神社の募集条件によって採否が決まります。
なお神道系の大学や神職養成機関で学んだ後に巫女として神社に奉職する例もあります。希望する神社へ直接問い合わせるとよいでしょう。
- 神道系大学
- 國學院大學、皇學館大学
- 神職養成機関
- 塩竃神社神職養成所、出羽三山神社神職養成所、神宮研修所、熱田神宮学院、京都國學院、大社國學院、國學院大學別科
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7.拝殿の幕にはどんな意味があるの?
幕の役割で最も目立つのは覆いです。わが国ではすべてを露出する事を嫌い、幕によって全体が晒される事を防いでいるようです。
幕には壁代(壁になるもの、壁に代わるもの)の働きがあるものと思われます。
祝賀会場あるいは祭礼の神酒所に紅白の幕を引き廻らすのは、ごく一般に見受けられる光景ですが、これによって限られた期間、いつもとは違った神聖な空間を生み出す事が出来るわけです。
聖と俗の境界の役割を担うという点では鳥居と似た働きをしているとも言えます。
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8.神主さんや巫女さんが着ているものはいつ頃からのものなの?
神職が着用する装束のうち正装は平安時代の束帯に由来し、これに次ぐ斎服は直衣に由来します。束帯は貴族の正装でしたが、直衣は略装でした。狩衣は今日の作業着や普段着に近いものでした。浄衣は狩衣とは別の系統のものでしたが形状は狩衣とほぼ同じです。
巫女が着用するものは千早と言います。
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9.神主さんが持っている木の板は何というの?
笏と呼びます。本来は威儀を正すためのものですが、メモを貼り付けて用いたり、縦に割って笏拍子に使うこともあります。
素材は古くは櫟の木を用いました。位が一位になるようにという貴族の願望からでた語呂あわせによっています。
なお「笏」の訓はコツですがシャクとするのは音が「骨」に通ずるのを嫌ったためです。
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10.お供えの数は決まっているの?
現在では三方または高槻に五台ないし七台のお供えを差し上げることになっています。
ただ神社によって古くからの仕来りがある場合はそれに優先されます。
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11.神明・八幡・熊野…と色々あるけど、神社には系統があるの?
あります。
- 伊勢神宮系が神明神社・神明宮・天祖神社。
- 宇佐神宮系が八幡宮・八幡神社。
- 和歌山県の熊野本宮大社系が熊野神社。
この他、春日大社系、鹿島・香取神宮系、氷川大社系、稲荷神社系、秋葉神社系、東照宮系など、いろいろあります。
中でも伊勢神宮は全国にある神社の「本宗」(中心・拠り所)とされています。
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12.たくさんの神社があって神様同士が喧嘩することはないの?
ありません。
むしろ古典の祝詞には「神議りに議り」と見えるほどです。これは「神々が協議をなさった」という古事記・日本書紀の神話と同じ考えに基づいています。
さながら大型コンピューター同士のネットワークのように、神様は互いに緊密に連絡を取り合いなさっているというのが、古来の日本的な考えです。
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13.神社と神話は関係あるの?
大いに関係有ります。神話は本来、祭りの中で語られたものでした。御祭神の信仰を語り継ごうとしたからです。しかし時間と共に次第に神話のみを独立させ、脈絡のあるものとした結果、読ませるための神話が生まれます。
とはいえその精神は一貫しており、たとえば古事記の神話が語るのは天皇陛下とその祭祀の意味で、日本という国柄の核心に触れる内容になっています。
神楽は演じて信仰を表現したのに対し、神話は語ってそれを表そうとしたものなのです。
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14.お稲荷さんは狐なの?
稲の神様は倉稲魂命という神様で、きつねはその眷属(神様のお使い、使姫)として信じられて来ました。五穀豊穣の神様の御神体は狐ではありません。きつねはあくまでもお使いです。
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15.神様には毎日お供えするの?
した方が望ましいです。沖縄県の島々では今日でも雨水を蓄えて飲料水としています。台風は暴風雨と共にやってくる厄介ものですが、反面恵みの水をもたらす有り難い存在でもあります。沖縄の例にとどまらず、かつては水が天からの恵みであることは誰もが知っていました。
神様やご先祖様に日々水を差し上げたのは、そのような御恩への感謝を表したものです。毎日の神様へのお供えを「日供」と呼びます。中でも特に米・塩・水は欠かせません。
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